一九三二年生まれの黒井千次の新作『流砂』は老いを描いている。この小説にも、老いの平穏はないし、といって老いのみじめさもない。ごく自然なこととして老いを受け入れる落着きがある。
語り手は「息子」。七十代になる。東京都外と思われる住宅地に妻と住む。子供は家庭を持っている。孫がいる。「息子」と同じ敷地内には、九十代になる「父」と「母」が暮している。老いの家族である。・・・
平穏はないし、みじめさもない、「老いを受け入れる」小説

一九三二年生まれの黒井千次の新作『流砂』は老いを描いている。この小説にも、老いの平穏はないし、といって老いのみじめさもない。ごく自然なこととして老いを受け入れる落着きがある。
語り手は「息子」。七十代になる。東京都外と思われる住宅地に妻と住む。子供は家庭を持っている。孫がいる。「息子」と同じ敷地内には、九十代になる「父」と「母」が暮している。老いの家族である。・・・